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未来の医療を担う高知大学発「研究医師養成プログラム」― 文部科学省「高度医療人材養成拠点形成事業」―

医学科 井上 啓史 教授

膨大な医療データと探求心を力に、医療を変える人材を育成

 高知大学医学部は、令和6年度に文部科学省「高度医療人材養成拠点形成事業」に採択されました。これまで本学が地域とともに積み重ねてきた40年にわたる医療実績と、国内においても先進している光線医療、再生医療、ゲノム医療等に関する臨床研究への取り組みが評価され、次世代を担う研究医を育成するための拠点づくりが本格的に動き出しています。今、医療は急速な技術革新と社会のニーズの変化によって、大きな転換期を迎えています。AIやゲノム解析、デジタルヘルスなど、新しいアプローチが次々と登場する一方で、それらを実際の臨床に生かし、社会実装へと結びつける「研究医」の育成は全国的な課題となっています。高知大学は、この課題に真正面から挑み、「臨床現場で研究をデザインし、成果を社会に届ける医師」を育てることを使命とし、挑戦し続けます。

データ駆動型研究基盤「RYOMA3」の開発

 開院当初より、約40年間にわたり、38万人分の診療データを蓄積してきた「RYOMA2」を進化させ、研究・臨床の現場で活用できる新システム「RYOMA3」を構築します。
 RYOMA3は、膨大なリアルワールドデータを匿名化して収集し、臨床医等が直感的に操作できるインターフェースを備えています。これにより、疾患の診断法や治療法に関する新しい知見を効率的に抽出し、予測モデルを構築することが可能になります。これまで以上に研究成果が論文化されるだけでなく、診療ガイドラインや医療開発等に直結する実用的な知見へと繋がるのが大きな強みです。
 また、この基盤は、単なる研究のためのツールにとどまらず、若手医師や学生も容易にアクセスできるシステムとなることから、教育の現場においても活用されます。臨床と研究がシームレスに結びつくことで、「現場から生まれる研究」「研究が還元される現場」という好循環を実現し、高度医療人材の育成に寄与します。高知大学が誇るデータ駆動型研究の象徴的な取り組みとなります。

「先端医療フェロー制度」の創設

 次世代の高度医療人材育成の要となるのが、高知大学独自の「先端医療フェロー制度」です。先端医療フェローは、自ら最先端の研究を推進するだけでなく、専攻医・研修医・学生を屋根瓦式に指導し、教育と研究を同時にリードします。上級医が下級医を教え、学んだ者が次の世代を指導していく連鎖的な仕組みであり、指導医不足や教育格差の解消に大きく寄与します。先端医療フェローは、この仕組みの中核として位置づけられ、医師の働き方改革にも資する存在となると確信してします。さらに、先端医療フェローを支える体制も整備し、研究アシスタント(RA)や学生アシスタント(SA)が日常の研究業務を補助し、先端医療フェローは研究と教育に集中できるよう設計されています。
 「先端医療フェロー制度」は、単なる人材配置ではなく、教育・研究・支援を一体化した高知大学独自の育成モデルとして機能していきます。
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井上 啓史
医学科 井上 啓史 教授医学部長